前回のとおり、後輩のゴール君は海外逃亡しちゃうし、
ハッカーは別のデスマプロジェクトに引っ張られるし、
ちびっこ先生はプ〜クスクスと含み笑いだけして助けてくれないので、
動画圧縮チップは、絶賛ワンオペ開発中となっている修士2年の夏。
憩いの場は、スーパー銭湯のみ。
発散の的は、研究室のソファーのみ。
超絶激務ブラックを味わっていた。
この状況下で「大変だ!大変だ!」と慌ただしくしている人物がいた。
それは、諸悪の根源である、教授だ。
「君に構ってる暇無いから!!」
「オメェの席ねぇから!!」ばりの名言が、今日もこのブラック研究室で生まれるのであった。
教授の興味は今や、音声チームの『ファービープロジェクト』と、僕が絶賛ワンオペ開発中の『動画圧縮チップ』の進捗のみ。
それ以外の事柄・人物は、もう眼中にはなかった。
この状況にもっとも悪戦苦闘していたのが、
初登場の、1コ下の出来の悪い後輩(音声チーム)、山田だ。
[NEW]1コ下の後輩③: 山田
音声チーム。出来が悪いとのことで、ファービープロジェクトにはもちろん参加していない。
男。甘いフェイス。イケメン。
「すごぉいですねぇ」と小学生並みの感想しか言わないけど、後輩としては可愛い部類。
山田は、修士1年になり、卒論のテーマはボツにされ、
学会とかいう前に、この先何を研究してよいかわからない状況にいた。
しかも、絶望的なデスマーチを2つ抱えているこの研究室の状況が状況だけに、
超放置系ブラックを喰らっていた。
山田「先生、僕はこの先研究、どうしたらいいですか?」
教授「今君に構ってる暇、無いから!!」
山田「ほえ・・」
こんな調子だった。
山田の聞き方も直球過ぎてどうかと思うが、
この返しはさすがに可哀想過ぎる。もう先生名乗るんじゃない!っていうレベルだ。
とまあ、こんな感じで元々あってないようなもんだったが、
指導体制はさらに酷い状況になっていた。完全に崩壊していた…。
そして全く指導されていないせいなのか、山田自身のせいなのかわからないが、
彼はゼミの発表で2つも伝説を作った。
山田のゼミ伝説①「はい!目視です!」
山田は、久々に、音声のシミュレーションのプログラムを作るという、直近の課題を与えられ、
このゼミ発表で、進捗を報告するという。
山田「先週先生からもらったテーマのシミュレーションのコードは、8割ぐらい書けました!!」
教授「ほう!進んだのか!!ニッ」
ちびっこ先生「意外とやるじゃないすか。プ〜クスクスクス」
ゼミ室が和やかな雰囲気に一瞬包まれた。
山田「はい、多分もうちょっとです!!」
ちびっこ先生「今何につまづいてるんすか?」
山田「・・・えっと、わかりません。」
ちびっこ先生「ん?どゆことすか」
ざわつくゼミ室。
ちびっこ先生「8割できたっていう根拠は?どうやって確認してるんすか?デバック状況かあるでしょ?」
山田「目視で確認してます!」
ちびっこ先生「も、目視??まさか、コンパイルは、、してないってことすか?」
山田「はい!!目視です!!」
時が、止まった。
ちびっこ先生「き、き、君は…コードが合っているかどうかを、動かさず…目で…確認してるんすか…??」
ちびっこ先生「プ〜〜〜〜〜クスクスクスdんsfじょいじおjぢだjぢおsふじこ」
ちびっこ先生は、壊れた。
山田のゼミ伝説②「はじめての社会科見学」
ゼミ発表の順番が来ると、なにかしらテーマを持ち寄り、
パワーポイントのスライドを作って発表する。
といっても、今の研究の進捗を発表するのが暗黙の了解ではあった。
※留学生が日本人学生より多いので、なぜかスライドは英語で作らなければならない縛りあり。
山田は「先週インターンシップ行って終わっちゃったので、今日はそれについて紹介します」
と言い、発表を始めた。
どうやら某通信キャリアのインターシップに行ってきたらしい。
教授「せっかくの機会だ。興味深いね、どれどれ」
意外と皆食いついた。
しかし、
山田「新しいサービスをグループで考えて、和気あいあいしてて楽しかったです!」
教授「ん?」
山田「なんか、大きな司令塔?監視室見に行って、すごかったです!」
ちびっこ先生「…ただの、社会科見学じゃないすか…プ〜クスクス」
小学生並みの感想に、ざわつくゼミ室。
ちびっこ先生「…ほかに何か印象的な事なかったんすか?」
山田「あ、えっと!監視室でアラートがずっとビービー鳴ってました!その時岐阜県でトラブルがあったらしいです!」
ちびっこ先生「…そ、それは一番言っちゃいけないやつなんじゃないすか…プ〜クスクスクス」
小学生の社会科見学の発表は、無理やり幕を閉じられたのだった…。
いやー、山田かわいいですね。(白目)
ラボが崩壊した体制だと、こんな伝説級のゼミ発表が生まれるのかもしれませんね。
では、また!!!